作業着生地の取説|あなたの防寒着に最適な繊維はどれでしょうか?
作業着や作業服には、快適な作業をサポートする機能が備わっています。
このサポート機能は、防寒を意識する冬用の物ほど顕著であり、形状やポケット数など見た目で分かる以外に、作業着を形成する生地繊維にもそれぞれの役割が与えられています。
定番のところだと、ストレッチ性のある生地。これは非常によく見かけます。また作業中、火気厳禁の状況が意外と多いためか、制電性のある生地もよく見かけます。
そこで作業着や作業服を形成している生地繊維に着目し、タグを見た時に、これってどんな機能があるんだ? って疑問を解決する情報をお届けします。
この記事の目次
どうして作業着の生地繊維について解説するのか?
現在、作業着の生地繊維は多様化しすぎています。
気になったことがありませんか? 作業着や作業服の生地繊維って、どうしてこんなにも色々あるんだろう? って。
その理由は、作業環境に合った生地繊維が求められているから、です。
例えば、溶鉱炉で作業する方と冷凍倉庫で作業する方。この両者が求める作業着は、内容が違います。
溶鉱炉で作業するなら、耐熱性能が高く、通気性に優れた作業着が求められます。
一方、冷凍倉庫での作業なら、防寒性能が高く、保温性に優れた作業着が求められます。
極端な比較になりますが、事実です。
結果、それぞれの状況で需要のある生地繊維を供給していった為、多様化が起こりました。
探している機能が見つかるのは良いことです。そして、需要に応えられる技術力があるのも良いことです。しかし多様化したことにより、弊害が生まれました。
生地繊維が多すぎるのです。これにより、作業着選びは難しくなりました。
そこで、作業着や作業服に使用される生地繊維について。特に防寒着に使われている生地繊維について、まとめようと思った次第です。
それでは、始めます。
アルミキルト|体温を逃さず保温する素材
現在、防寒系作業着には、2つの主流があります。このアルミキルトは、一つ目の主流である蓄熱保温の仕組みに近い素材です。
アルミキルトは、アルミシートにより冷気を遮断。作業着内を冷やしません。
またキルトシートが、体温を外へ逃さず、保温性を保ちます。
どのような作業であっても、体を動かすわけですから、体温は自然と高まります。
アルミキルトを使うと冷気の侵入を防ぐわけですから、体温が高まると共に保温効果が増し、常に温かな状態でいられる作業着が制作されます。
ここで気になる点!通気性が悪んじゃないか?
外気をシャットアウトする機密性があるなら、湿気が外に逃げないのでは? と考えるのは当然です。
そこで、アルミキルトが使用されている作業着を選ぶ際は、通気性のある別素材も使用されている。もしくは、通気性について商品タグ等で触れられている物を選びましょう。
アルミキルトが使用された作業着
アルミキルトメッシュ|透湿性を備えた機能的生地
アルミキルトに透湿性を持たせた生地です。ポイントなのは、通気性ではない点。
通気性とは、空気を通す性質。
透湿性とは、水蒸気を通す性質。
もしも空気を通してしまったら、外気も通してしまうため、防寒作業着としては大きなマイナスですよね。
しかし水蒸気を通す性質なら、外気を通さずに、蒸れの原因となる湿気を外に放出するため、防寒作業着としてはベストです。
アルミキルトメッシュは、蒸れの心配を軽減し、暖かくいることが出来る作業着と言えるでしょう。
アルミキルトメッシュが使用された作業着
サーモトロン|蓄熱保温素材を練り込んだ繊維
サーモトロンは、主流である蓄熱保温素材を使った生地繊維です。
サーモトロンが優れている点は、蓄熱素材を繊維の芯に練り込んでいること。これにより、熱を蓄えて保温するという概念をストレートに再現しています。
サーモトロンに使用されている蓄熱保温素材は、吸光熱変換性セラミックと呼ばれ、太陽光に含まれている近赤外線や可視光線を熱エネルギーに変換し、作業服内部の空気を温め、保温効果を生み出します。
もちろん、天候によりその効果は左右されますが、サーモトロン開発元のユニチカが公開しているデータによれば、3~5℃の体温上昇が見込める結果となっています。
太陽光を熱エネルギーに変換するのであれば、冬であっても、作業中の防寒対策が可能だと思いませんか?
サーモトロン(ラジポカ)が使用された作業着
サーモトロンラジポカ|遠赤外線を放射する繊維
サーモトロンと同じく、ユニチカが開発した生地繊維です。
サーモトロンラジポカは、太陽光を熱エネルギーに変換する機能と遠赤外線を放射する機能を併せ持っています。
2つの機能により、相乗的な保温効果を生み出します。
作業服はもちろん、スポーツウェアにも活用される生地繊維となっております。
なお、サーモトロン系の生地繊維、最大のメリットは洗えること。
繊維一本一本が、蓄熱保温素材を包んで作られているため、洗濯により、保温効果が弱まることがありません。
これは生地表面に加工を施し、防寒する繊維とは大きな違いがあります。
サーモトロンラジポカが使用された作業服
メガヒート|保温と透湿を一つで行うハイブリッド素材
メガヒートを一言で表すなら、高機能のハイブリッド素材です。
保温性と透湿性と言う相反する特徴を併せ持っており、秋冬の作業着として大活躍します。
メガヒートが持つ特性は、体から生まれた熱を皮膚に再反射し、嫌な蒸れの原因となる汗により発生して水蒸気を素早く外に逃がすことです。
通常であれば、体温は外気に触れることで、徐々に奪われていきます。しかしメガヒートは、温かな熱が生地に反射され、再び体を温めます。
しかしこれだけでは、汗による蒸れが生じてしまいます。そこでメガヒートは、汗がこもらないように水蒸気を外へ排出します。
メガヒートをハイブリッド素材と呼ぶ所以は、一つの素材で保温と乾燥を完結できるからでしょう。
メガヒートが使用された作業着
メガーナ|静電気対策の強い味方!
乾燥する冬の季節は、静電気被害が至るところで起こります。
単に電気が走り、痺れる程度の被害なら良いですが、下手をすると火災の原因ともなってしまいます。
また精密機械を扱うような現場では、ちょっとした静電気でだって、狂いが生じる可能性もあります。そんな時にオススメなのが、メガーナを使用した防寒作業着です。
このメガーナは、制電性とは違い導電性の素材でして、電気を流す特性を持っています。
電気を貯めないので、突然、バチッと火花が飛ぶことは少なくなります。
その為、メガーナ素材を使用した上下の作業服を用意することで、目に見えない静電気を素早く逃がすことが出来ます。
そうなると、メガーナ素材の作業着を一式着るのがいいのか? と思われるでしょうけど、ゴム手袋やゴム長靴など、絶縁体となるゴム製品と組み合わせるだけでも、この導電性は発揮されます。
メガーナが使用された作業着
シンサレート|軽くて温かな!新しい技術が詰め込まれた素材!
シンサレートは3M社が開発し素材であり、非常に高機能な防寒素材だという印象を受けました。
それは、ヒマラヤ遠征隊のウェア素材として、全日本スキー連盟が冬季オリンピックの公式ウェア素材として、シンサレートを採用していることからも分かります。
シンサレートは、空気をたくさん取り込めるように、極細のマイクロファイバー繊維を組み合わせて制作されています。
そして取り込んだ空気の層が外から入り込もうとする冷気を遮断し、保温効果を生み出します。
またシンサレートは1%以下の吸水性の影響で、非常に乾くのが早く、作業着としては嬉しい速乾性があります。
さらに無臭であり、アレルギー誘発物質を使っていない為、衛生面も安全と言えるのではないでしょうか?
シンサレートは、蓄熱タイプではない防寒作業着のもう一つの主流と言える生地素材で、断熱して保温するタイプです。
薄く軽いのに温かい生地素材なので、今後、防寒作業着への採用が増えていくといいなーと思います。
シンサレートが使用された作業着
ダイヤドビー|生地目が独特の素材!
ダイヤドビーは、特徴的な機能性があるわけではありません。ただ、生地目が独特なので、表面の見た目が他にはない物を感じます。
ダイヤドビーの特徴は、軽いこと。そして防風素材であること。さらに撥水性があり、高い保温力も備えています。
つまり、高い機密性に主眼をおいて作られています。
防風性能をもち、撥水機能も持っている為、雨にも強い防寒作業着を制作することが出来る素材です。
ダイヤドビーが使用された作業着
ブロックフリース|温か素材を高密度で!
フリースは文字通り、あの防寒着として名高いフリースです。
そのフリース生地を、格子状の均一な形で敷き詰めたブロックニットにより作られた生地です。
ブロックフリースに採用される格子状の作りは、保温性を高めるように意識されており、それに加えて、軽量であること、汗を素早く吸収し、拡散することが可能です。
生地素材はあくまでもフリースではありますが、作りを変えることで大きな変化をもたらしている防寒作業着の生地となっています。
ブロックフリースが使用された作業着
ラミネート起毛メッシュ|ラミネート加工により生まれた素材!
防風性と透湿性に優れたフィルムと起毛させたメッシュ素材をラミネート加工した生地です。
ラミネート加工は、別々の性質を持った素材を1つにし、それぞれの機能を相乗的に高める物です。
ラミネート起毛メッシュで言えば、フィルムにより冷気を遮断することで体温を低下を防ぎ、保温します。
さらに蒸れを防ぐために、優れた透湿性を加えています。
またストレッチ性がある点も忘れてはならないポイントです。
防風性と透湿性により、温かで使い勝手の良い防寒作業着の生地素材です。
ラミネート起毛メッシュが使用された作業着
マイクロファー|抜群の保温性を持つ素材!
ファーといえば、一般的な防寒衣類にも使用されるものですよね。そんなファーが採用された作業着も当然あります。
マイクロファーは、細い繊維を持つ素材を裏表、しっかりと丁寧に起毛させることで、生地の間に空気を取り込み、保温力を生み出します。
これによりマイクロファーは、軽くて快適な素材となっています。もちろん自然な空気孔が出来ている為、透湿性もあり、防寒作業着の素材として使い勝手が良い生地となっています。
マイクロファーが使用された作業着
マイクロ系|色々な効果が盛り沢山の素材!
マイクロ系としたのは、マイクロ〇〇という素材が色々とあるためです。その為、まとめてマイクロ系としました。
マイクロ系の特徴としては、細い繊維の糸で作られた素材であり、いずれの物もとても軽量で温かな生地となっております。
そんな生地をベースにして、それぞれに特徴を持たせています。
例えば、マイクロリップ。コンパクトにまとめられる生地です。
マイクロフリースは、厳寒地にも対応する保温性を持っておりMICRO PROTECTIONと呼ばれる物は軽さだけではなく、薄くて強度も高い上、優れた保温性もあります。
さらに、このMICRO PROTECTIONは、ラミネート加工を施すことで、密閉性が上がり、外気を遮断します。
マイクロ系繊維が使用された作業着
防寒作業着の生地素材は、今後も追記予定です。
なお作業着を買う際、経費で買えるのか? 買えた場合、勘定科目はどうなるのか? 気になりませんか?
せっかくなので触れておきますと、従業員の方に貸与する、もしくは与える作業着は、福利厚生費となります。
事業者本人の作業着は、消耗品費になります。
作業着をお買い求めになる方の中には、企業に所属せず、自営としてほうぼうの仕事を請け負う人も大勢います。
そんな時は、ぜひこの勘定科目を覚えておいて、節税にご活用下さい。
2021/01/07